簿記の流れ

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簿記の流れ

簿記3級を勉強するにあたって、簿記の流れを知ることは重要です。
ここでは、簿記の流れを見ていきます。
「簿記の基礎の基本」で専門の言葉を使わず説明しましたが、
ここでは簿記3級で必要な用語を使って説明します。

 

通常簿記の流れは以下の図のようになっています。
簿記の流れ

 

1)簿記上の「取引」

 

通常の会社で取引と言えば、商品やサービスの売買の約束を指します
(取引成立)が、簿記上の取引は少し意味が違います

 

簿記上の取引は、「財産の増減に関する活動」のみを指します。
このため、通常の「取引が成立した」時点では、まだ財産は増減する
行動を行っていないため、取引とはみなされません。

 

商品やサービスを提供し、債務が実際に発生した時点でのみ、
財産が増減する行動があったとして簿記上での取引が発生します。

 

また、簿記上の取引は家賃や光熱費などの費用の支払いや、
銀行預金の金利の受け取り、災害による建物や備品の損害
なども、「財産の増減に関わる活動」として取引とみなします。

 

それではここで「取引」の例を見てみましょう。

 

 

≪取引の例≫
① 1月5日  A業者からQ商品100ヶを現金100万円で仕入れた
② 1月10日 B商店ににQ商品75ヶを150万円の商品を月末払いで売った
③ 1月15日 会社の車をぶつけられて30万円の修理費を現金で支払った
④ 1月18日 車の修理費に対して保険で25万円現金で支払われた
⑤ 1月31日 月末にB商店から150万円を現金で回収した
⑥ 1月31日 月末に会社の家賃20万円を銀行引き落としで支払った
⑦ 1月31日 月末に光熱費3万円を銀行引き落としで支払った

 

*本当の保険はそんなに早く支払われませんし、商品の仕入や売上は
月に何度も発生しますが、ここでは単純にするためにこのようにしました。
あまり気にしないで次に進んでくださいね。

 

2)仕訳

1)で起こった「取引」をあらかじめ決めてある「勘定科目」を使って
「仕訳帳」に記入していく作業を「仕訳」と呼びます

 

借方(左)と貸方(右)の考え方

仕訳は「取引」を借方と貸方に「仕分ける」ことです。
基本は現金や資産の増加は借方、減少は貸方に記入し、
現金の減少理由の費用は借方、増加理由の収益は
借方に記入されます。

 

借方と貸方の取引は以下のようにまとめることができます。
借方貸方

 

それでは上の1)の取引の仕訳をしてみましょう。

日付

適用

借方

貸方

1月5日 仕入

       現金
     A業者よりQ商品100ヶ仕入

100万円

 

100万円

1月10日 売掛金

       売上
     B商店へQ商品10ヶ売上

150万円

 

150万円

1月15日 車両修繕費

       現金
     業務用車の修理

30万円

 

30万円

1月18日 現金

       車両修繕費
     社用車の修繕費の保険金戻り分

25万円

 

25万円

1月31日 現金

       売掛金
     B商店から売掛金回収

150万円

 

150万円

1月31日 家賃

       当座預金
     家賃の支払い

20万円

20万円

1月31日 光熱費

       当座預金
     光熱費の支払い

3万円

 

3万円

 

借方と貸方の語源

ここで1つ疑問が湧いてきますね。
どうして現金や売掛金・備品などの資産が増える場合に「借方」へ
記入し、買掛金やその他の負債などが増えると「借方」へ記入
するのか?
「貸し」が増えるのが「貸方」で「借り」が増えるのが「借方」である
べきでは?

 

私も簿記を始めた時、どうしてもこのことが納得できませんでした。

 

この呼び方は「英語の直訳」に原因があります。
英語では借方を「Debit」、貸方を「Credit」と呼びます。
「Debit」はDebtorから来ていて、「借主」を意味します。
また「Credit」は「 Creditor」から来ていて「貸主」を意味します。

 

複式簿記が発明された頃、仕訳は債権や債務を記録
するために行われました。お金を貸した時には左側に
借主の名「Debtor」を記入し、返した時には右側に記入したと
言われています。
また、反対にお金を借りた時には右側に貸し主「Creditor」を記入し、
返した時には左側に記入しました。

 

この頃の慣習が残って西洋では「Debit」「Credit」と
呼んでいましたが、日本に複式簿記が入ってきた時
に取引の性質ではなく、英語を直訳してしまったことが
多くの簿記を勉強する人々を混乱させた理由になっています。

 

転記

仕訳が終わると、一定期間の取引を整理しやすくするために
各勘定科目ごとに「総勘定元帳」かこれを簡単にした「T字勘定」に
転記します。

 

この時、どの取引を転記したかが分かるように、日付や記入の
相手勘定も記入しておきます。

 

1)の取引の転記

 

≪総勘定元帳例(現金)≫
総勘定元帳

 

≪T字勘定例≫
T字勘定

 

「総勘定元帳」を作成する時、必要に応じて様々な「補助簿」を作成します。

 

ここで一度記入する「帳簿類」の整理をしてみましょう。
  「帳簿の体系」をチェックする簿記の帳簿体系

 

集計

一定期間の取引が終わると(月次、四半期、半期、年度末等)、
各T字勘定または総勘定元帳を集計し、試算表を作成します。
試算表には資産、負債、資本、収益、費用の5つの簿記の要素が
すべて含まれています。

 

図にするとこのような感じです。
試算表仕組み

 

また、上の1)の例を試算表に表わすとこんな感じになります。
この時左右の合計が一致することが必須です。
試算表例

 

決算整理

決算では「貸借対照表」と「損益計算書」を作成します。
これらは試算表を下のように分解して、「会社の財政状況」と
「会社のもうけ」を表すものです。
図に表わすとこのようになります。

 

簿記決算整理

 

また上の1)の例を貸借対照表と損益計算書に表わすと
このような感じになります。

 

貸借対照表例   損益計算書例

 

ここまでで、1)の取引が22万円の利益を生み、これが資産
を22万円分増やしたことがわかりますね?

 

どうですか?

 

なんとなく簿記の流れがわかりましたか?

 

今では安くて使いやすい会計ソフトが出回っているため、
このような処理を手書きで行うことはあまりありませんが、
そういったソフトを使うにしても、今後簿記を勉強するうえで、
簿記の流れを知っておくことは非常に役に立ちます。

 

とは言え、一度に全部覚えることは難しいと思います。
何度も練習問題をやっていれば覚えていくものなので、
今はぼんやりこんな感じということを理解できれば
OKです。

 

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